英単語の場合、日本語の単語のように2つ以上の漢字の組合せを違える事によって、違った意味の言葉を作っていくことができない。そこで1つの単語が全く関係のない2つ以上の意味を持つ変な単語がたくさんある。
例えば、 bank は「銀行」「土手」(ゴルフのバンカーを思い出せばわかる)の意味があって、この2つの意味は全く関係がない。
case は、1「場合」2「事情」3「事件、判例」4「恋愛ざた」5「症例」6「箱、ケース」
1は in case of 「の場合は」という意味。 3は court
case 「判例」。2、5は case study、6は
suit case(スーツケース)など、誰でも知っている。
ところが appreciate に関しては、驚くべき事に哲学的ともいえる1つの根から異なった意味が出ている。
appreciate : どの辞書を引いてみても、この言葉の意味として、1)感謝する2)鑑賞する、味わう
3)理解する4)正しく評価する となっている。
I appreciate you, は、 Thank
you. と全く意味が同じで、もう少し正式な言い方である。「ありがとう」と「感謝する」という程度の違いである。
しかし、私には I appresiate の方が、気持がこもっているような気がする。もっと本質的にありがたいということである。なぜなら、
I appreciate it. ということは、それを理解する、良さが解るということである。本当にありがたいと心から思うときは、言葉の上だけでなく、相手のしてくれたことの意味を本当に理解して、つくづくその良さが解ることによって、人は本質的にありがたい、感謝するという気持になる。また、例えばこの焼き物の良さが解る観賞眼があってこそ、これはありがたいものだと思う。豚に真珠ではありがたいと思わない。ということは、対象を理解し、正しく評価できる教養と物事の良さがわかる善意を持った品性と、それを味わうことができ、観賞することができる豊かな感受性があってこそ、人に「感謝します」という言葉が出てくる。こう考えると
appreciate という言葉は哲学的に無限に深い根を持っているような気がする。
そして、わが身を振り返れば、この世に生きて生かされて、良いことがあればありがたいと思うが、実はブツブツと文句を言う日の方が多い。他人のしてくれたこと、あるいは“生”そのものの良さを味わうことができる観賞眼を持っていない、と気が付くのであった。
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