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島田校長の
知っておくと得する!?面白英語知識
その10 


含蓄深い英単語

日本語には、中学・高校の時に習ったことを思い出してみればわかるように、 表面上の意味だけでなく、背後に無限といってよいほど非常に意味深い単語がいくつもある。
わび、さび、幽玄、枕草子のおかし等、古典的、伝統的な例を挙げるまでもなく、 日常の言葉の中にも幾つかの例が考えられることは皆さんも知っているだろう。

一方、英語の方はそれに比べると直接的で黒か白か、はっきりした表現が多いと思われるだろうが、 あにはからんや英語にも尊敬語・謙譲語・婉曲叙法など、ソフトな表現はいくつもあるのである。
表現だけでなく、単語にも含蓄の深い言葉があるので、今回は一つ二つその例をあげよう。

spoiled : この言葉を辞書で引いてみると、「損じる」「駄目にする」と書いてある。
You spoiled my camera. (あなたは私のカメラを駄目にしちゃった)などと言う。
しかし、 She is spoiled. は、 (彼女は駄目にされちゃった)とは訳さない。 (彼女は甘やかされている)という意味である。
つまり、甘やかすということと、駄目にする、ということは英語では同じ言葉である。 この一語自身が意味深い教育論である。日本の母親は、この言葉をかみ締めてみたらどうだろう。

 

英単語の場合、日本語の単語のように2つ以上の漢字の組合せを違える事によって、違った意味の言葉を作っていくことができない。そこで1つの単語が全く関係のない2つ以上の意味を持つ変な単語がたくさんある。
例えば、 bank「銀行」「土手」(ゴルフのバンカーを思い出せばわかる)の意味があって、この2つの意味は全く関係がない。
case は、1「場合」2「事情」3「事件、判例」4「恋愛ざた」5「症例」6「箱、ケース」
1は in case of 「の場合は」という意味。 3は court case 「判例」。2、5は case study、6は suit case(スーツケース)など、誰でも知っている。

ところが appreciate に関しては、驚くべき事に哲学的ともいえる1つの根から異なった意味が出ている。

appreciate : どの辞書を引いてみても、この言葉の意味として、1)感謝する2)鑑賞する、味わう 3)理解する4)正しく評価する となっている。

I appreciate you, は、 Thank you. と全く意味が同じで、もう少し正式な言い方である。「ありがとう」「感謝する」という程度の違いである。
しかし、私には I appresiate の方が、気持がこもっているような気がする。もっと本質的にありがたいということである。なぜなら、 I appreciate it. ということは、それを理解する、良さが解るということである。本当にありがたいと心から思うときは、言葉の上だけでなく、相手のしてくれたことの意味を本当に理解して、つくづくその良さが解ることによって、人は本質的にありがたい、感謝するという気持になる。また、例えばこの焼き物の良さが解る観賞眼があってこそ、これはありがたいものだと思う。豚に真珠ではありがたいと思わない。ということは、対象を理解し、正しく評価できる教養と物事の良さがわかる善意を持った品性と、それを味わうことができ、観賞することができる豊かな感受性があってこそ、人に「感謝します」という言葉が出てくる。こう考えると appreciate という言葉は哲学的に無限に深い根を持っているような気がする。

そして、わが身を振り返れば、この世に生きて生かされて、良いことがあればありがたいと思うが、実はブツブツと文句を言う日の方が多い。他人のしてくれたこと、あるいは“生”そのものの良さを味わうことができる観賞眼を持っていない、と気が付くのであった。

 

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